それにしても灯りは
闇のない場所では役に立たないと気づいたんだ
「天邪鬼」は
「てんのみかく」というアルバムに収録されている曲である。
あれは高校3年生のころ
受験期に入っているというのにまるで受験がから逃れるように
俺は漫画を読んだり、新しい音楽を探していたりで忙しかった。
その活動の中で見つけたのが「てんのみかく」である。
なぜかそのアルバムはどれも名曲だと思えるようなものばかりで
方向性というか、イメージできる風景が違うのに、どうしてこんなにも気味よく仕上がっているのだろうと
人からもらったよく分からない携帯型音楽再生器にその音楽を入れた。
うれしいときに「うれしい」って言わない。
苦しいときに「くるしい」って言えない。
こだまじゃない。
それは天邪鬼?
その状況と逆のふるまいをするというのは自分自身にも言えることだけれど
俺の場合は、未熟にも照れ隠しからそれをしていることが多かった。
好きな人に好きなものに対して、何も言えない、ふるまえないのは
なんだか思春期の子供のようだった。
「天邪鬼」という曲はこのアルバムの中では
比較的、淡々と歌われている曲である。
曲は、風の音と共に始まる。
守るべき存在を失った者の嘆きのようなものがつづらていた。
それにしても灯りは闇のない場所では役に立たないと気づいたんだ
というのはよく言ったもので
いくら力を持っていても、役立てる場所がなかったり
その力を使いたい対象がいなかったりすると
それは、もはやないのと変わらない。
ただ失った者の重要さを感じる。
そして立ち尽くすのである。