上京する際に持たされた段ボール箱には
複数のカップラーメンが入っていた。
同時に持ってきたものの中には追いコンか何かでもらった玄米があった。
カップラーメンやカップ焼きそばには独特の魅力がある。
成分表示に示されたいくつも化学調味料的何かが、人間を刺激して、支配しているのだろうか。
俺は大学生活の中で実際にいくつものカップ焼きそばを食べていた。
今思えば健康志向と自分で言っていた割にはとんでもないことをしているように思う。
そういえば大学1年生の時に気が狂ったような顔でカップ焼きそばの超でかでかサイズを食べていたあの男は元気なのだろうか。
自分自身、決して人の心配をしている場合ではないだが
大学の頃に出会った人々の中で、本当にこの人は生きていけるだろうかと心配する人は少なくなかったように思う。
カップラーメンを持たされたのは、恐らく、これでも食えということなのだろうが
持たされた瞬間から少なくとも3年が経過し、その間、クローゼットの中で眠っていたことを考えると
カップラーメンと俺はずっと近距離恋愛を続けていたわけである。
しかし、それもそろそろ終わりが近い。
カップラーメンとは別れないといけない。
どん兵衛のかたわらにある見るからに体に悪そうなラーメンは何なのだろうか。
食べたらきっと口の中を痛める上におなかを下しそうな雰囲気を感じる。
ありがとう、カップラーメン。
そう思って俺はカップラーメンを手に、ドアを開けた。
