白みかん

白みかんは、おいしいみかん。みかんを剥くのがうまいよ。

転職していないのに転職しているようでいて転職していない日々



「伊賀の天然水 強炭酸水」を飲んでいた。

昔は三ツ矢サイダーと一緒に生ハムを食べることが好き
おまけにマヨネーズも好きで
よく3時おやつと言わんばかりにポテトチップスを投げ込んでいたのだが
そんな自分に腹を立てて、経済的な水好き人間になった俺は
その中間ともいえる炭酸水を今じゃあ飲んでいた。

昔々、ラウンドワンでボウリング大会をしたことがあった。
その頃の夏は今よりも穏やかで、その頃見た道路は遠くに見えるカゲロウが何とも言えない
夏らしさを演出していて、そのあふれんばかりの自己主張の強さに俺は「嘘だろ」と言わずにはいられなかった。
鮮やかっただった景色の中で勝ち取ったラウンドワンシャンパンボトルの中には炭酸水が入っていた。
俺は、炭酸ジュースだと思った。

「まずい!」

小学生はとにかくなぜかパチパチとしたものを好んだ。
それはただ甘味であるというだけではなくて、味プラスパチパチという刺激万歳であることからだと思われる。
とにかく脳に刺激を与えたいのだ、だから…。

強炭酸水がおいしい。
なんだか、炭酸水を飲む人は意識高い系だという話を聞いて
より、自分は意識高い系要素を取り込んでいるんだという気がして、おいしさを感じた。
そうして空になっていくペットボトルを見つめながら俺は…。

転職活動をしてい…ない。

今日は特別メールも来ていないようだった。
書類選考に応募してから帰ってくるまでの時間が非常に長い。
それに通ったとしてもWEB適性検査が非常に難しかったり
どんどんどんどんと壁のイメージが具体的に見えてきて
正直、転職にて成功するというイメージのほうがかすみ始めている。

事務的な処理についても各種保険なんてものはどうしていいのかよく分からない。
7月の末には離職票が届くはずだが、それもどう扱っていいのか
皆目見当がついていないのである。
失業の先輩が俺には必要だった。

だが、俺の目の前を歩いてくれる人間というのは数限りなく少なかった。

機材を持って、SDカードの有無を確認し
以前作成したマニュアルに従ってWEBページの設定を終える。
そう俺は映像を現在配信している。
これはとある〇党から請け負っている仕事である。
配信が終了すると、業務内容を簡単な報告書にまとめた。

俺はひと段落して思った。
これはもう…仕事では?

どうして、転職中にも関わらず俺は仕事をしているのか。
思えば転職を開始してから…いや違うか
前の職場を終えた最後の日から、心の休まる日というのはあまりなかったように思う。

6月に移るまでに、実家で過ごした3日間が
せいぜい何もしていない時間だった。
3日間なにもしないなんてことはざらにあったはずである。

そして俺は、前の会社では3年間を累計しても20時間も残業していなかったように思う。
残業の必要もなかったが、それは俺が優秀な働き方をしたのか
会社がアホだったのか、どっちかは定かではない。

企業情報を見ると、そこそこ、前の会社はいい会社だったことが分かった。
なるほど、俺の超えるべきハードルは高い。

長所と短所を教えてください。

はい、私の長所は「周りを巻き込んで推進する力を持っていること」です。
はい、私の短所は「理想が高すぎること」です。

本当の自分はそんなんじゃないんです。
本当の自分は成人近くなるまで自我を生むことができなかった
失敗作なんです…

などと面接でいうことはできず
表面上を塗りたくってほころんで取れかかったもろい壁を
誰かに押し付けているようで、嫌だった。

そりゃあ、雇ってくれれば周りの人間よりは
きっと一生懸命働くさ。

だけれど…。
これで…本当に…いいんだろうか。