白みかん

白みかんは、おいしいみかん。みかんを剥くのがうまいよ。

転職して1か月…

 

9月25日、土曜日。
今日も夜になっていった。

朝日がダイレクトに差し込む部屋に引っ越してきたのは
もう2か月も前になっていることから
ここ最近の自分の記憶の密度の薄さに驚いている。

どうにも調子がすぐれなかった。
だが着実に人生は進んでいた。
自ら歩を進めるというよりも俺は魚の大群に流されているように
強制的に前に進められいる…という気分だった。

転職して1か月。

転職活動について以前、記事にした。
https://origotou2020.hatenablog.com/entry/2021/07/10/131611?_ga=2.61917228.1483830998.1632559879-520196341.1625186105

度重なるお見送りの末に入った、ブラックホールのような会社。
大量採用中だとなめてかかったが最後、密度の高い研修生活が始まってしまった。

▽転職初日

転職初日、パソコンが段ボールに詰め込まれてやってきた。
なるほど、これがリモートワークなのだ。

前職では緊急事態宣言中に渋谷を歩かされるくらい
新型コロナウイルスには無頓着だったが
この会社は大きいだけあってリモートワークを許してくれるらしい。

リモートワークにも一長一短あると思うのだが
まずは、新型コロナウイルスに対策してくれていること
そして、交通の手間がかからないことというメリットがある。

俺はパソコンを開封してオンライン研修に間に合うように
わくわくするような、何かよく分からない気持ちでセッティングを始めた。

第二新卒だった

会社の中で明確に区分があった。
それは経験者として扱われるのか
第二新卒として扱われるかである。

第二新卒として扱われた場合は基礎トレーニングということで
1か月間のトレーニングが行われることになっていた。

第二新卒が何かわからなかった俺は
パソコンの前でうろたえながら質問文を書き込んでいた。

社会人生活3年目以下は第二新卒として扱ってくれるらしい。
つまり、俺はまた最初からこの会社の社員として教育されていくのである。

▽研修生活

はるか昔のことであるが
3年前も同じように研修生活が1か月ほどあった。

その時は一人暮らしが初めてであり
東京が初めてであり
何もかも初めて尽くしの自分がいた。

その時と比べて研修生活は苛烈なものだった。
何かが違った。
ここまで、きびしくなかった。

別にブラックであるとか、講師の態度が厳しいとかではない。
むしろ講師の態度は前の会社のほうが横柄だったように思う。
だが、研修の密度が高かった。
複数のブラウザでいろんなことを並行しないといけない。
そうしないと作業が定時内に収まらないのだ。

▽疲れた

定時が終わると俺はソファに倒れこんだ。
ぎりぎり二人くらい座れるソファである。

ちょっと安っぽいので何年もつのか分からないが
壊れないぎりぎりのところでジモティで出したい。

疲れていた。
リモートでこれである。
実際に対面で行われていたら
ただでは済まなかっただろう。

リモートでいる分、服装に規定はなかったし
終わればその瞬間自分は完全に解放されている状態だった。
すぐに休憩に入れた。
それでいてこの疲労感であった。

▽初心者から…

前の会社では最後のほうは「先生」とおだてられていたが
この会社の研修レベルではそれが普通のようだった。
むしろ、イマイチどうやっていいのか分からない課題にぶつかったり
「初めてかな?」とナチュラルにあおられることもあった。

そうなのだ、きっと俺は社会人として
中途半端な成長しかしないまま、ここまできてしまったのだ。

基本的な研修を行ってくれるこの会社はある意味ありがたかった。
俺は経験値をリセットしてやり直すことにした。
なろう系の逆である。

▽給料日

そして約1か月が経過した。
まだ最後の少しばかり重たい研修が残っているのだが給料日を迎えた。

俺は電子明細のページを開いて二度見をした。
誰もいないのに二度見というギャグみたいなリアクションをしていた。

前の給料の2倍もそこには入っていた。

ブラックホールのように人を吸収している企業。
一体どうやって人件費を払っているのかと不思議になる。

それとも前の会社が安すぎたというのか。

仕事は何をやっても大変なのである。
同じ大変ならばお金をたくさんもらったほうがいいと
誰かが心の中で言っている気がした。

それと同様に研修の密度から想起される
仕事の苛烈さに不安を覚えなくもなかった。

お金のために、そして自分のために
なによりも過去の自分のために
俺はこの生活を続けることができるのか。
それとも今度こそ、過去の仲間たちが言っていたようにドロップアウトするのか。

顔の見えない思い出の中の同級生たちが
後ろ指を指している気がした。

現実の俺の狭い1Kルームはどこまでも静かだった。
自分がどっちに向かっているのか分からない。