白みかん

白みかんは、おいしいみかん。みかんを剥くのがうまいよ。

「もっと、仕事を楽しんでほしいんですよ」

 

 

 

「もっと、仕事を楽しんでほしいんですよ」

「会社を辞めようかなって」。

そう、直属の上司に話したのは7月の半ばくらいだっただろうか。
今は9月である。
気付けば、当初辞めようとしていた会計年度の切り替わりを超えていた。
それはいいことだと思う。
きっと良いことなのだと思うのだが、でもこのままいても
それはあくまで延命措置にしかなっていない。
根本的な課題の解決ができていないし、もっと言えば課題そのものが俺には見えていない気もする。

会社を辞めるというお話を上司にした時に
所属のトップが面談をするということで俺は面談をすることになった。

「もっと、仕事を楽しんでほしいんですよ。」

彼はそう言った。

「はい…?」

俺はそう答えた。
そして面談は終わった。

俺は辞めなかった。
数年前、ニート(求職者、英語ではbetween jobsというおしゃれな言い回しがあることを知る)だった俺はキャンプで焚火を見ながらこんな会社を狙っているよと宣言した。
その末に俺はこの会社に入った。
からしたらまあ、上出来だろうと思った。
俺の小学校、中学校、高校の人たちと会う機会はほとんどない。
もしかしたら俺の存在は誰の心にも残っていないかもしれない。

そして上出来だからと言って
肝心なのはそれが持続可能であるかどうかだ。
一瞬輝いても人生は続く。

たくさんのお金を見た。
たくさんのお金を得ることによって多少できることに幅が出た気がする。
だが、それだけだった。

仕事を楽しめないのは
俺が年齢の割に全然スキルがないからだろう。

俺は少しはできるんじゃないかあと思って転職を始めたけれど
特殊過ぎて、ニッチ過ぎるスキルセットは
市場価値につながらないのだと知った。

マジョリティであることが結局、のところ社会正義なのだ。
俺は悟った。

俺は…俺はどこに向かえばいいのか。
分からなくなってしまった。
そして自分がすでに終わった存在であったことを思い出した。