白みかん

白みかんは、おいしいみかん。みかんを剥くのがうまいよ。

25年間、服に興味がないということ

お題「#買って良かった2020

 

 

俺は服というものに興味がなかった。

いや、正確に言えば、今の自分でさえ
服に興味があるのかどうか、はっきりと答えられないのかもしれない。
だが、間違いなく、客観視という視点を持たなかった。

オタクファッションのイメージをあなたは覚えているだろうか。
赤いチェックにジーパン、そしてリュック。
あとポケットがたくさんついているなら、それもいい。

そういうファッションがなぜ生まれてくるのか。
分からない。
だが、俺は、6年前の俺はそのファッションをしていた。

母親が出してきた服を、着る。
俺にとっては着るものというのはそういうものだった。
自分で買ったり、選んだりという概念、考え方そのものがなかったのである。

うちにはたくさんの服が合った。
母親の趣味らしい。
そのあまりの多さに俺は戸惑う。
何がどこにあるのか分からない。
探すのも大変だし、たいていのものが、なぜか女物である。

なので、母親が出していたものを着るのだった。

「自分はファッションリーダーである」と彼女は言った。
もちろん真に受けていたわけではないが、それでも特別警戒はしなかった。

そうして、なぜか気に入っていた赤いチェックシャツに
よく出てくるジーパンを併せれば、ほら、出来上がった。

…。

いつまでもそうしてはいられないと思って
俺は、大学生活の中で多少、どうすればいいのかを考えてみた。
…分からなかった。

周りを見回す。
自分と同じ、同年代の、男たちがそこにはいる。
だが、何が、違うのか、何がダサいのか、何が格好いいのか分からない。

時に俺は、ハットをかぶってみた。
なんだかよく分からなかった。

時に俺は、ジージャンにジーパン姿になった。
ガーボウイだ。

時に俺は、フォーマルな姿になった。
なんだか、これが一番マシな気がした。

そうして俺はフォーマルな格好をすることが増えた。
シャツにイージージャケットを着るのだ。

だがこれも行き過ぎると、よくないのである。
フォーマルな服もある程度までは許容されるが
素材などを間違えると、非常に、サラリーマンのようになってしまう。
カチカチである。

遂には、俺は、ジレベストまでつけるようになっていた。
これは…、なんだかおかしいことになってきた。
自然じゃない。

自然とは…。俺は、考えた。

服を買ったことがない。
服屋に入ったことがない。
試着の流れも購入の流れも分からない。

ああ…。自然とは何だ。
服の正しさとは何だ。
間違いはある、だが、正解はない。
そんなことが世界にはあふれていた。
服もその一つだというんだろうか。

そうして俺は、服について考えることにする。

まず、俺のスタイルは、さほどよくはなかった。
平均身長に満たない体の長さ。
そして、かつての身体測定で座高が高いこと。
体重は痩せてしまい、筋肉にかけている。
前髪は薄くなってしまい、なかなかヘアスタイルにも苦労する。

俺は思ったのだった。
これは…手遅れではないか。
いや、しかし…。
諦めてはいけない。

俺は、考える。
正解はない。
正解はないものに対して、どのように学習を行えばいいのか考える。

俺の中に格好いいは…なくはなかった。
自分と対話した結果、確かに格好いいと格好よくないの境界があった。
しかしそれはものすごい薄い感覚であり、どのようにして拾い上げればいいのか
皆目見当がつかなかった。

俺は、ドラマを見た。
ドラマに映る、イケメンとして扱われている人間たちをピックアップして
服に注目した。

イケメンに映るように演出されているということは
この服もイケメンが着る…おしゃれなものに設定されている。
その設定にはプロが関わっている。
その道の有識者が関わっているのだ!

そんなわけで俺は、服を、いくつか購入した。
目新しい服が2つある。

①バンドカラーシャツ
美容師を演じているイケメンが着ていた服…に似ている。
バンドカラーシャツと呼んでいるがもしかしたら違うのかもしれない。
とりあえず何かというと襟がたっていない
たつべき襟を持たない感じの服だった。

大学時代は襟の付いたシャツばかりしか着ていなかったし
そもそもこんな形の服があることも知らなかった。

俺が購入したレーヨン素材のバンドカラーシャツは
洗濯しても形が崩れずしわにもならない
とてもいい一品だった。
しかし、半袖しかない。

半袖しかなかったため、俺は今でも
冬でも、このバンドカラーシャツを着るのだった。

ライダースジャケット
渋そうな顔の男が着る印象のある服。
今の俺にはなんだか筋肉が足りないような気がしたけれど
先行投資みたいな気持ちで、俺はこれを購入した。
いまだプライベートな用事がなさ過ぎて着る機会がないのが
ちょっと、玉に瑕である。

俺が買ったのは正確には
レザーブルゾンというらしい。

まあまあいいお値段というか
俺が購入した服の中で一番の値段である。

服って、高い。
おもちゃなんかよりも、高い。

俺は愕然とした。
大学時代、交通費だけで火の車だった。
服に手を出していたらどうなっていたのだろう。

しかしそれでも、こだわること、自分の意思を出すのは
早ければ早いほどいいと思う。

そういう意味では子どもにお金を持たせられる
大人になるのはいいことだ。
しかし、お金を与えるのも
それなりの格好いい理由がないと
子どもの側も納得しないだろう…。