一応、故郷とされる出身地を出ていく時、俺はろくに別れ的なことをしないまま
新しい土地へと旅立っていった。
旅立っていったと言っても、いきしなは気を使った父親の運転だったし
何か分からんけど不動産屋との仲介まで父が行っていたので
新天地へと赴くにあたって俺がしたことはほとんどなかった。
俺の両親は、離婚している割に、こういうところは似ていると思う。
肝心なところで手を出すので俺はそれを眺めているだけに終始してしまう。
だが、今回は違うのだろう。
間もなく俺は、この3年間の生活を終えようとしている。
なんだかんだで失い続けた3年間だったが、会社の同期に悪い人たちはいなかった。
一部を除けば人にも恵まれていたと思う。
それでも俺はもう、限界だった。
出ていく準備をしよう。
もういいから。
俺は3年前に組み上げた謎の棚を分解した。
少しだけ部屋が広くなった。
ラスボスとして、俺の頭上にはロフトベッドがあった。
でかい、でかい。
もはやどうにも動かすことができない鉄の城は最初から備え付けてあったのかのようにふるまっている。
いつかはこれもかたさないといけない。
あの時3人でくみ上げたものを、俺は一人で分解するのか。
いや、無理だろう。
業者を呼ぶしかないのかもしれない。
そもそも部屋から出せるかどうかも怪しいものだった。
出ていく準備をしよう。
人に別れを。