白みかん

白みかんは、おいしいみかん。みかんを剥くのがうまいよ。

学生の後輩



2021年度になった。
新型コロナウイルスによってマスク社会となり、はや1年。
マスクがどうしよもなく、そりゃあもうどうしようもなく嫌いな俺としては最悪の気分だ。
それでも、2021年度になった。

特別新入社員が多いとも思わなかった今日の電車。
恐らく世間もリモート対応などをしているのだろうか…と思いきや、スーツ姿で談笑し、LINEを交換しようとしている
恐らく数日前まで女子大生だったであろう人の姿が見えた。

渋谷の街は今日も異臭を漂わせ、誰が見えているか分からない看板がきらめていた。
臭いし、しんどいし、人は多い。
壁にもたれかかる人、階段に腰かけて弁当を食う人。
なぜかロフト前に佇む、美人。何かの撮影か?

ガラスに映る左右逆の自分。
電車に揺られている間にスマートフォンを見て、何やらグロッキーだ。

昨日で学生最後の後輩が、学生を終えて社会人になった。
とはいえ、その後輩というのも3人だけである。
彼女たちが幸せに過ごしていく世界を、願う。

仕事をしていると、同期の社員から「結婚するよ」と知らせが入った。
出てきた感想が「このやろう!」ではなく「おめでとう」だった自分に安堵した。
おめでとう、おめでとう。

朝5時の青い光の差し込む窓ガラス。
遠くから太陽が今、のぼろうとしている。
俺はグループラインを片端から抜けていった。
何も、感じなかった。

東京に出てきて3年。
何かが変わったのだろうか。

恐らく自分の体は、老けた。
部屋は少しだけ汚くなり、壁紙の一部が剥げてしまって
もう人を招くこともないだろうという気分になっている。

「私は死ぬことにやりたいリストがあるんだ」

テレビから流れてくるセリフが聞える。
自分はあるだろうか。
バケツリスト。

ない。

なんだかもう、自分一人では何も楽しめなくなっていた。
どこかに行きたい。
でも、一人で行ったとしてもそれは、行った気になっているだけかもしれない。
なにかをしたい。
でも、一人でしても、何も感じない。

誰かとじゃないとダメなんだと、思った。
みんなは…、みんなはどうやって生きているのだろう?
俺がこんな気持ちになっているのは家族も、友人もほとんどいないままに
ただ毎日を過ごしているからか、趣味もないからか。

そうして眠くなってきた。
眠くなったら眠る。
おなかが空いたら食べる。

まるで動物であった。

さよなら学生の後輩たち。
そして、こんにちは。
そろそろ俺と、バトンタッチをしよう。