白みかん

白みかんは、おいしいみかん。みかんを剥くのがうまいよ。

「連絡しなきゃよかった」

2年ぶりに出社した。
オフィスカジュアルというのは難しい。
大学生の頃の服装がまさにそのような風体だったと思う。
俺はそれにあらがうようにカジュアルな服装を日々検索しているというのに
現実は俺にオフィスカジュアルを求めるのであった。

久しぶりの出勤時の電車に乗った。
休日に電車に乗ることがあった。
だから大丈夫だと思っていたのだけれど
実際のところは人に酔いそうになるくらいにはダメージを受けていた。
どこを見ても人、人、人…。
人の群れ、人の波を感じる。
これらがすべてどこかのビルに吸い込まれていくのかと思うと
気分が悪くなるようだった。
7月の太陽はじりじりとスーツ姿の自分を焼いていった。
目の前の男立ちもまた、焼かれていった。

重い…、パソコンおはいったカバンが重かった。
決してこのパソコンは軽くない。
高級なビュッフェに緊張しながら俺は、昼を過ごして
また夜も更けていくのだった。

金曜日、夜。
サイゼリヤで靴を履き替えた俺は後輩と出会った。
重い鞄を片手に、靴をさらに片手に持って大阪城の周りを徘徊する。
彼女は少し苛ついて見えた。

「連絡しなきゃよかったですね」

雑談に次ぐ雑談の中で言われてた言葉は
いくつもの言葉に紛れて胸の中に深く刺さっていくようだった。

「人から誘われたら行きます、私から誘うことはありません」

人はそんなものだと思うようになった。
正確には今までの自分が人に好かれていたのかもしれない。
そして今の自分は人に好かれていたのかもしれない。
好かれていれば誘われれる。
好かれていなければ人は人から誘われることなどないのだろう。

連絡しなきゃよかった、は
そんな俺の唯一の抵抗を封殺するには十分な言葉だった。
彼女は恐らく何も感じない、考えていない
あるいはもしかしたらその瞳の奥で何かを考えているのかもしれない。
だが、俺にはそれを察することはできなかった。

暑い夜。
家に帰って鏡を見ると方のところにあざが残っていた。
足が痛い。

土曜日は、くたびれて倒れてそうだなと俺は思った。
月曜日が近づく。
俺は恐怖にかられる。