白みかん

白みかんは、おいしいみかん。みかんを剥くのがうまいよ。

こうして、俺は会社を辞めた

 




もう寒くはない5月の終わり
ほぼ徹夜したような満身創痍の体で
俺は会社を辞めた。

いわゆる新卒で入社して3年目の退職だった。

先ほど長文を打ち終えたところなのだが
依然として雨はやまないため
この早起きした朝を無為なるものに活用したいと思う。

●そもそも働けていた奇跡
何の因果か故郷を離れ、東京という土地に来た。
一人暮らしと初めての社会人生活が同時にスタートすることに恐怖はなかった。

そのころには、もう心が死んでしまっていて
浮き草のように、既に決まってしまっていた内定に引っ張られるように
俺は東京へ引っ越した。

絶望感が慢性的に体の上から下へと循環し
3月の冷えたフローリングに
身をかじかませながら俺は膝を崩していた。

引っ越しの作業が終わると同時に
父親が「俺は再婚して子供がいる」と俺に告げた。
別に嫌な気分にもならなかったが
いい気分にもならなかった。

大学の同期が「お前は絶対に一人暮らしできない気がする」と言っていた。
その同期とは特別な付き合いがあるわけではなかったが
冷静な目線を持っているやつだった。

実際そのとおりで炊飯器を壊し
大雨で部屋を水没させ
時には卵を床で割り、虫が大量に発生したこともあった。

どうして自分が出社するのか
そして、どうして生きているのかと思いながら
生きながらえる日々を振り返ると
そもそも働けていたこと自体を奇跡と称したいところではある。

●帰りてえ
東京には二人の友達がいたが
俺が東京に来たと同時に二人ともいなくなった。

だから俺は頻繁に大阪に帰っていた。

別に、それ以外でも大阪に帰っていた。

帰りたいのか、自分は、大阪に。
別にそういわれたらそうでもない気もしたが。

俺は入社した年の終わりだか
その一年後かの終わりに上長に2021年で辞めることを告げた。

●皆さんのために
職場にできることをずっと考えていた。
俺にできることやできそうなこと、興味のあることで
何か手伝いができないかと、何かプラスアルファができないかと考え
俺は開発言語を用いて自分独自の動きを始めた。

そして、会社全体の何かよくわからないけどチームのリーダーもした。

俺は自分にまとわりついている無力感と罪悪感をどうにかしたかった。
大学時代の自分がずっとくっついてまわっていて
ふとした時に自分がした行為のすべてが脳裏に浮かんで
キーボードを叩きつけてしまいたい気分になった。

だから、もっと頑張りたかったのかもしれない。

開発言語のほうは自分一人でやっていて
かつ、周りがやっていなかったので
ある程度気楽にできていたのだが
リーダーのほうはそうではなかった。

学生時代だって会議の進行をしていて
それがうまいうまいとおだてられていたのだが
会社の会議は1時間が限度ということもあり
また、ミドル層を相手にするには
自分はまだ社歴が浅すぎた。

会社のローカルルールも分からず
グチグチと攻撃されて
嫌な気分になることが増えた。

それでもすべての役割をやり終え
さらにプラスアルファ俺はそのチーム自体を解体しようと奔走した。
今思えば頑張りすぎている気もしたが
本業のほうが結構暇だったのだと思う。

●ゆるさねえ
本業に加えて業務の自動化、システム化に乗り出した自分。
そして、全く別のところで同時にリーダーも務める自分。
明らかにほかの社員よりもやることの幅は広がっていたが
そんな自分を蓋をしたのが上長だった。

いわゆる天下りの存在が
評価にふたをし、俺の評価は最低点の1.0になった。

●未来は狭い
俺のやっている職には未来はないと思った。
いまだにファックスを使い続けている文化も
天下りのおじいさんが多すぎるのも気に入らなかった。
そして、何よりロジカルではない理由で
紙を使い続け、余計な手間を増やし続ける体質には絶望感さえあった。
こいつら、仕事ができれば、なんでもいいのか。

俺はこのままでいいのかと思った。
そしてもう、限界だと思った。

その時の俺に合ったのは、当初あった絶望感というよりも
会社というのものに対する怒りのような感情だった。

●限界
順調に時は進み、俺の年齢は20代後半に入っていた。
何をやっているんだと思った。

俺がもっと、昔からちゃんとしていれば
もしかしたら俺は周りの人たちと一緒に
幸せに過ごしていた未来もあったのかもしれない。

現実の自分は風呂場の電気が切れて
上長にふたをされ
新型コロナウイルスのあおりで海外研修もいけず
プラスアルファで行った活動たちには
結局、感謝以外はもらえなかった。

いや、きっと俺は感謝をもらえただけで
満たされてはいたけれど。

もうここでは限界だと思った。

当初は死んでやろうか~と思っていたが
捨ててないものも多いし物の処分とかどうしようと思った。
死ぬ奴はそんなことは考えないと思って…
いや、結局、自分は自分の欲を満たすまでは
死にたくないのかもしれない。

●後始末
自分が行っていたRPA活動に終止符を打ち
後任の人ができたことによって
俺はあとくされなくやめることができた。

後任の人とはいろいろ教えたことはあったけれど
彼女は彼女できっとたくさん自主的な勉強をしてくれたのだと思う。
そういう点では、非常に助けられた。
まあ先輩なので、そこは助けられたけれど、いえ~いくらいにとどめておこう。

自分がリーダーを務めていたチームについては
その後一年は形だけ残っていたが
新型コロナウイルスのあおりを受けて
ほぼ活動休止になっていた。

いろんな意見を出したが
それが結局、俺のものというよりは
会社の改革チームとかいう謎の団体に横取りされて
いい気分ではなかったけれど、これも大体達成できたと捉えてもいいだろう。

後始末はできていたのだ。
あとは辞めるだけだ。

●最後の日
上長は何度か俺を止めようとしたが
心の底から止めているようには見えなかったので
俺は相手にはしなかった。

かなり前から話していたからか
俺の退職には特に反感を買われることはなかった。
むしろ退職すると早めに伝えている分
俺は損しかしていないからだろうか。

Tシャツと、クオカードをもらった。

そして、疲れた。
疲れた俺は、そのTシャツを着て
大阪の方向に向かって歩き出した。
さらば東京。