白みかん

白みかんは、おいしいみかん。みかんを剥くのがうまいよ。

ハロー!ハローワーク

 生年月日の記入欄に令和が追加された書類の写真




少なくとも8歳の自分がイメージしていた25歳の自分は
こんなものではなかったのだが
8歳の自分という他人が見つめている何かを
かなえてあげる義理も人情もなかった。

そもそも俺はみんなを助けて感謝される正義になりたかったのであって
その正義が世の中に存在しないと悟るのに明確なイベントがなかった以上
俺の中の目標は空中分解…というよりは大気圏で突入して
徐々に消えていったような…研磨の末になくなっていまったような消え方をしてしまった

大体となる夢を持たないまま、ここまで来てしまった俺は
やはりあの頃の延長線上にいる気がする。

目の前の小さな体は言う。

Youtubeでお金を儲けてそれで生きていくねん」

小学4年生の体から発される言葉の数々が
癇に障って仕方ない。

「いいねえ」

主体的にしたいことがある分、その夢をかなえる可能性が
まだ現実に存在している分、俺はそれにいいねえというしかなかった。
存在しない夢よりも、0.00001%でも存在している夢のほうがまだ見る価値がある。
エンターテイナーは実在するけれど正義は存在しない。
正義は俺の頭の中にあるので、それは現実にもれだしたりしない。

いかに文章を連ねようと、現実における自分が無職であることに変わりはなかった。
だらしなく脱ぎ散らかされた服が畳の上に散乱し
6月に遅刻した梅雨が7月の大気を席巻している。

湿気をまとって俺の髪の毛はうねる。
怒りの炎のように舞う。
昔のギャルが盛っていたみたいな髪になる。

そうだ、ハローワークにハローしよう。

ハローワーク職業安定所
存在は知っていた。
ハローワーク

つまり、それはワークにハローすることだ。

ワークにハローしないといけないなあと思いながらも
6月の間は有休期間ということもあり
俺はワークにハローしてこなかった。

俺は仕事を辞めた先輩であるオータムマウンテンに連絡を取った。
オータムマウンテン。

フリーランスを目指す男。
高校時代は会計としてその能力を発揮し
数々のものにチャレンジをしてきた男。
俺はひそかに彼を評価していたが
なぜだか彼の周りの環境は彼を評価していないように思えた。

この世の中、相対評価でも、絶対評価でもない。
評価するものが評価し、その評価が伝播していくのだ。

ハロー、ハローワーク

太陽がきらりとともる月曜日に俺はハローワークにたどり着いた。
暑い。
浅くかぶった帽子を突き抜けて刺す太陽の光が痛かった。

建物の中に入ると
いろんな人がひしめいていて
俺はその中に混じっていった。
登録はスマートフォンでできるらしい。

若年層向けの受付で俺は話を聞いていた。
昔よくわからないエージェントと一緒に見た
求人情報の紙とよく似ているページがあって
それをもとに求人をしていくようだった。

ハロー…。

たくさんの若者、氷河期、シニア。

俺はその中に吸い込まれていく。
画面の中では求人ゴリラが暴れていた。