気温が下がり始めていた。
夏を感じる暇もなく、季節が廻ろうとしていた。
朝、俺はゴミ袋を持ってマンションの階段を下りた。
不思議と、肌寒い、いや寒い、というまでにはいたらないが
肌を刺すようなピリピリとした感触がない。
東から太陽の光が漏れ出るように
空をピンク色に染めていくのを感じた。
細切れの雲が住宅街の奥から流れて出てくる。
紐を取り付けた鍵で集合ゴミ置き場の鍵を開いて、ゴミ袋を投げ入れる。
このようにこまめにごみを出すと、より一層コバエも出にくいというものだ。
俺は少しだけこの夏成長した。
秋になろうとしているのに春のにおいというのは
これまたいかに。
それでも新学期前のような何かわけのわからない爽快さに俺は包まれていた。
実際には爽快なことなんて言うものはない。
仕事のストレスが無くなってから2か月くらい経過しているが
今の余裕のある仕事量は本来のものではないことくらい、承知しているというものだ。
俺の会社の業務時間は本来こんなものではない。
春の風、正確には秋の風か。
膝上についている脂肪が、ひざの骨を痛めるようで
なんだか気持ち悪かった。
俺は隣の公園の中央に立った街頭の下で何度か屈伸をした。
誰もいない公園。
誰もいない空間。
部屋に帰ってもだれもいない場所。
しかしもうおれは誰もいないことにほとんど慣れてしまったのかもしれない。
あれから5年経過した。
構ってくれていた人たちのことを置いて
置いて行かれて
今日も日々が、流れる。