白みかん

白みかんは、おいしいみかん。みかんを剥くのがうまいよ。

星野源試験の思い出

試験中にいろいろ考えてしまう人

2023年10月9日日曜日。
10月のはじめ、都市によってはまだ夏の残り香がするような時期だが、確実に冬に近づいていた。
地球は温暖化していたのか、それとも何かの予兆か。
どちらかと言えば服の心配をしながら俺は4時ごろに目を覚ました。
今日は試験の日だった。
とにかくこの試験が頭の隅にあって、そのせいで満足に身動きが取れないでいた。

俺は朝起きてご飯を食べてから服を着替えた。
外用の服に着替えたのは久しぶりのことだった気がする。
Zommを起動して、習慣となっているオンライン教室で適当に会話をしてから
急いで家を出るようにした。

明らかに電車の時間に間に合ってない気がする。
久しぶりに俺は橋った。
本当にそれは久しぶりだったため、駅に着いた頃は息も絶え絶えだった。
俺は駅から離されたところに住んでいるのだから
もっと余裕を持って動くべきなのだが、
最近は待っている時間というのをどうも楽しめなくて
ぎりぎりに出ていく癖がついているように思えた。
これはよくない。

乗り換えだった。
俺は急いでメトロからJRの駅へと移ったが、それは逆のホームだったことに気づく。
係員を呼び出すためにボタンを押す。
係員が実際に来るのかと思えばそこには小さな画面が映っていた。

「反対に来てしまいました」
「目の前の改札を開けました」
「ありがとうございます」

小さな会話を終えた後、反対側のホームへと急ぐ。
しかしタッチの差で間に合わなかった。
ここまでドラマチックな間に合わなさをするのか。
もう少し人が多ければ時間が稼げていたのかもしれない。

「これはもう間に合わなくないか?」

心の中でささやき声がした。
別に受かる気もしないし、もういかなくていいかもしれない…。
と思ったのだが、それでも挑戦しない気にはなれない。

次の電車を待つためにホームの席に座りながら
受験票を改めて見つめる。

「30分までならば遅刻可能」

そのように書かれていた。
正確には遅刻可能というよりも許容するような書き方だった。

「それなら最後まで頑張ろう」

そもそも遅刻しかかる時間に外出したのが悪いのだが
そんなカラ元気を出しながら俺は走ることにした。

よくよくアプリを見ると電車ではなく駅の交通機関はバスだった。
バスは苦手だ。乗り方が分からない。

アプリのナビを見つめながらバス停を見つける。
時間になっているがバスは来ない。
よくよく停留所の看板を見つめていると反対だった。

ああ、また反対か…、と思い、俺は橋った。信号はぎりぎり青色だった。
脚がよく動く、久しぶりに脚のエンジンがかかっていた気がする。
ぎりぎり間に合ったがまたしても息を切らしている。

優先席が目の前にあったので目の前に座った。
何個か空いていたのでまあ許容されるだろうか。

次の停留所についた時、車いすのおばあちゃんが入ってきた。
じろっと人の視線が映った気がした。
それは俺が見られていたのか、おばあちゃんが見られていたのか
分からないが
俺は反射的にどうぞどうぞ、と席を譲っていた。
電車と違ってバスだと俺はこのように動くのか、と
バスの距離感がそうさせたのかもしれない。

「どうぞ、前に座ってください」。

優先席はいくつも空いていたので
おばあちゃんが俺に促した。

おばあちゃんはマンションで友達がいないことや
お見合いで結婚したことなどを俺に話しかけ続けた。

試験会場に到着した。
結局のところ1分程度遅刻した。

何だ、頑張ればかなり間に合うじゃないか。

持参した焼きおにぎりが鞄の中で揺れる。
俺の戦いは始まる。
そして星野源のイメージが俺を殺そうとしていた。