白みかん

白みかんは、おいしいみかん。みかんを剥くのがうまいよ。

緊張します!前編

 

緊張というわけのわからない機能を搭載したのは
なぜなのだろうか。
人間というのは基本的によくできている。
できすぎているくらいによくできていて
いろんな機能を内蔵してそれを肌で覆い隠して
その表面には体毛をはやしている。

中身を想像すると、結構グロテスクな気分になるから
人間はたぶん、人間の中身をあんまり解析しないように
インプットしているのだろう。
解剖する人たちなんかはその原則に逆らっているから
あんまりその原則は強くないらしい。

俺は緊張しいだった。

クール系のキャラクターになりたいと
小学生の頃に思ってから
子供らしい子供の自分を封印して
冷静になるように努めた。
エモーショナルな自分をおさえて
ただ、実力を隠し持った少年を演じようとした。

すると、実力を持っていないのに
実力を隠し持っているふりをする滑稽な人になってしまい
俺は瞬く間に生き方を間違えてしまった。

クール系は圧倒的な実力を持っている人にしか
許されないのだった。
これが世界の真実。

そしてクール系は緊張などしないのだが
俺は極度の緊張人間だった。

緊張は慣れることができるよとマナー講師は言う。
本当かよと思う。
だが振り返ってみると俺の人生
発表らしい発表をしたのは
幼稚園の頃のお遊戯会のあいさつのみ。

それ以外は、まだまともだったころに
小学校の教室を沸かせた即興物語読み上げくらいである。
困った困った…そう場数を踏んでいなかった。

久しぶりに発表らしいものをしたのは
大学1年生のころ
ペアになった女子大生ビッグニ―とともに
芥川龍之介作品についてのプレゼンテーションだった。

極度の緊張に襲われた俺は
プルプルと震えた声と早口で
何やかをまくしたててビッグニーに
見捨てられて大学初回のプレゼンテーションを終えた。

大学生はプレゼンテーションをよくする。
もう、なんなら毎日がファッションショーの人もいるし
18年も生きていればいろいろな経験をしたあとなのであるので
そのポテンシャルを存分に発揮しているというわけだ。

緊張は、ある程度、自分を引き締めるために
役に立ついい機能だと聞いた。
だとしたら、緊張しすぎて
体が動かなくなるようなこれはいい機能だといえるのだろうか。

思うように動かないどころか
考えてきていたことまで真っ白になるというではないか。

こんなものがいい機能なはずがない。
俺は緊張を憎んだ。

中編に続く。