白みかん

白みかんは、おいしいみかん。みかんを剥くのがうまいよ。

その男はどうして意識低い系を目指すのか

 

 

その男、意識低い系

意識高い人たちが世の中に露出するようになってから
大体10年くらいが経過したと思われる。

どうしてか、その影響もあって学生のうちから
意識高い人たちも現れるようになってしまって
俺は、そういう人たちを見る運命にあった。

今回のタイトルを考えてから
俺はインターネットで「意識低い系」を検索してみた。
すると意識低系を自称するような記事が
あふれえてくるよ、あふれてくるよ、俺は激怒せざるをえなかった。

「タイトルを考えてから」とはいえ
俺はブログを書く時に
全体の構成を考えたりSEO対策をしたりはしない。
タイトルを考えてからインターネット検索をするときまでに
数秒であるし、文句を考えるのも数秒である。

だから、意識低い系を自称するような記事を
みつけて、そこから怒りが沸き上がるために参照したソースは
せいぜい2~3程度のもので
こんなことで怒っていいのならば
ポリティカル・コレクトネス。

そんな俺が目指すのが意識低い系
意識低い系なのだ!

意識低い系とは

意識低い系」で検索して出てきた
トップの記事は、このようなタイトルをしていた。
意識低い系エッセイが教えてくれた自分らしい働き方」
ばかやろう!
意識低い系がエッセイなんか書くか!

その次がこのようなタイトルをしていた。
「こだわりを脱ぎ捨てた私が
 意識低い系のまま
 キャリアカウンセラーで活躍できる理由」
ばかやろう!
意識低い系が英語ができるか!

俺は怒っていた。
もはや、意識低い系を「意識」の高低とか
スキルとか、態度とか、マインドだとかと勘違いしているものたちに対して。

意識低い系は、その在り方すべてを指して言うのである。
例えば、意識低い系はあらゆることができない。

文章が書けない。
挑戦すれば失敗する。
アピールしても無視される。
連絡しても無視される。
スキルはなく、コネクションもない。
恋人はおろか、友人もいない。
何も考えていない思想はない。
そこには自分の正義も意思も存在しない。

嫌悪

意識低い系に吸い込まれるように
その在り方について惹かれているのは理由があった。

大人気漫画を読むのではなく
打ち切り漫画を愛してやまないように。
俺は単に逆張りを、何も得しない逆張りをしているわけではない。
それはとてもとても意識高い人たちへの嫌悪感が
俺の中に満ち満ちしていることが原因だと思われる。

意識高い人々に出会ったのは大学生のころだった。
大学という場所にはさまざまなコミュニティが存在し
出会わない人は出会わないし、交わらない世界がそこには存在している。
なぜかは分からないが、一生庭でジャグリングをしている人たちもいるし
論文を書いている人もいれば、大学近くの下宿で一生イチャイチャしている人もいる。
それらの世界は交わらないし、俺と意識高い人の世界も交わらないはずだった。

授業は出なくてはいけない。
だが、俺は自由単位の対象である授業を選択し
そこにいたのが意識高い人、すなわち学生スタッフである。

スタッフ!
何て、嫌な響きだろうか、スタッフ。
学生なのにスチューデントではないんだというその態度に
俺は非常によく分からない物を感じた。
スチューデントの綴りってstudentで合ってるっけ?

とにかく先生と学生の間に…
とにかく、が回末位よりも一歩上をいっているかのようなその態度に
俺は怒りを隠さざるを得ないのだ。
その怒りは実を言えば妬みのようなものに近かった。

そうして、なんやかんやあって
俺は学生スタッフになっていた。

自分の意思が半分、外的な要因が半分。
どうしてそんなものをしないといけないのか。
どうしてそんなものを望んだのか。

そうして意識高い世界に関わっていくと
なんとも同じような言葉が空間を飛び交っているのが見えた。
「留学」「TOIEC」「ワークショップ」
インターン」「地方創生」「ボランティア」…
君たちには何が見えているというのか。
その世界は広いんだろうけれど、俺にはとても狭く見えた。
きっと、相対的にも絶対的にも俺のいる世界のほうが狭いんだろうけれど
その意識高いの世界にはきっと自分の居場所がないんだろうと
自分の奥深くに凝り固まって、澱のようになった思いが叫んでいた。

ああ~やだやだ~。
俺は走って逃げた。
顔面は蒼白で、顔は真っ青で、顔におしろいを塗った。

寝たふりをした。

就活が始まると、意識高い、という何かわけのわからない恐ろしい者は
もっと駆け足で俺のほうに迫ってきていた。
そうして俺も来るなら来いと意識の高いセミナーや
講演会などに足を運び始めた。

「人材ではなく人財と書きます」

何が違うんですか!?

まるでYoutuberのようなジャスチャーを駆使しながら
踊るようにプレゼンテーションを行う人々。

「君たちには光るものを感じないな」

ジェルでがちがちに固めた髪の毛で
足を組みながら就活生を一蹴する社長。
あなたは一体何者なのか。

「こいつらレベル低いって思ったんだよね」

営業成績ナンバーワンで
地元の愚痴の飲み会のレベルの低さに
飽きれてしまったシックスパットの営業。

学生のみが足を運べるというラウンジにいる自分。
おしゃれな音楽、ドリンク無料のスペース。
それでいて、ない内定。

実力が伴わず、意識だけが高まっていく感じ。
まだ…まだ上がるのか意識…。

そうして俺の意識は崩壊した。

何をしていたんだろう…。
そして彼らはやっぱり何をしているんだろう…。

よく分からない横文字や
涙の出そうな顔で語られるパフォーマンスの数々に
何かむなしさを覚えた。

自分がなりたいのは本当にこういうものなのだろうか。
そうしてなぜ自分は社会的に彼らに負けないといけないのだろうか。
意識低くなりたい。

意識が低いまま、意識の高い奴に勝ちたい。
そうして、意識の高さなんてものが何の役にも立たないんだと教えてあげたい。
そういうことができないのだろうか。
できないのだろうか…。