白みかん

白みかんは、おいしいみかん。みかんを剥くのがうまいよ。

「Sorry, can you type a chat?」

 

 

 

ものすごい疲れていた。
土曜日というのは非常に、非常に待ちに待った曜日である。
予定を入れて誰かと会話できなければもう、回復の手段すらない。
その回復の手段を用意しなかった9月については
どうなってしまうのか分からないが
自堕落に過ごすしかないのかもしれない。

8月が終わろうとしていた。
いまだ、業務内容や製品周りの知識がない俺は
苦しんでいた。

圧倒的なできない側の気持ちである。
最近、さらにさらにできない側の気持ちに立っていることが多い。
いや、いつだって努力不足な自分はできない側であることには間違いないのだ。
かつての自分は、一瞬でもできる側に立っていると勘違いしたに過ぎない。

仕事で英語を話すのは初めてだった。
思えば学生時代。
英語の授業で発音よく話してみようと読み上げの時間に
それっぽい発音をしてみてはクラスの人々に笑われ
それ以来俺が発音のことを考えることはなかった。

下手な英語は日本人の嘲笑の対象になる。
でもどうなんだろう。どうしてそんなふうになっているのだろうか。

俺が出会ったことのある英語ができる人というのは
みな完成された状態で出会った。
俺には聞き取れない何かが完璧に聞き取れており
その返しもまた俺には聞き取れないものだった。

途中の過程があるはずだ。
どこかに。

いつも先輩に頼りきりで、あるいは通訳者に頼り切りで
俺は怠けていたようだった。
その瞬間は突然やってきた。

「白みかんさんで進められるのなら、やってていいですよ」

通訳者を用意するというのは
そう簡単にできることではない。
彼らは専任ではなくあくまで業務についている人のうちの一人なのだ。

「はい…」

俺は原稿を用意して一生懸命…取り組もうとした。

「My English skill is very low now.
 Can you invite translator?」

「I can manege it.」

いや「manage it」じゃないよ。

案の定、聞き取ることができず
俺は会話中何度も己の能力のなさに絶望した。
まさか仕事で英語を扱わないといけない日が来るとは
学生時代の自分は夢にも思っていなかっただろう。

そもそも俺の書いている英語の文章は合っているのか?
Writing能力も怪しいのではないだろうか。
事実「お前何言っているか分からないわよ」みたいなメールが
返ってきていた。

まじで…。

「Sorry, can you type a chat?」

→Could you type in the chat box.
と言いたかったのだがとっさのことなのでまあしかたなかった。

そもそも業務内容への理解も薄いのに
それを英語でやれと言われると
もはや難易度が高すぎるのだ。

疲れて…、疲れた…。

ああ…。