今週のお題「100万円あったら」
パラサイトシングル、ニート、フリーター、引きこもり、子供部屋おじさん。
時代が進むにつれて人を侮蔑する言葉は生まれ続けてきた。
あんまり使われていないとはいえ、パラサイトシングルという言葉のインパクトはでかい。
パラサイトって…、寄生虫扱いかよ。
子供部屋おじさんといえば現代でも結構多いものなので
親孝行だからと言われれば納得してしまうのだが
実際には結婚して生活面を女性に頼り切ってしまうのは
こういった子供部屋経験しか積んでいないからではないのか。
そうして、こんな応接室で暮らしている俺は
何おじさんとして扱われるのだろうか。
25歳という20代中盤から26歳という20代後半へと突入する時が…近い！
ここに100万円があります。
パァン！さあ、どうする！
謎のマントをつけた男が言った。
そうして俺は思う。
100万円しかないのかよ！
命を懸けたゲームを開催するには弱いし
人を殺すにしても何かを請け負うにしても弱すぎる金額である。
車を買えるか買えないか。
家を買え…ない。
賃貸は借りれる、でもすぐになくなる。
100万円なら高所得者ならば数か月で稼いでしまうだろうし
1000万円を超える所得のある人間ならば1か月で稼げる金額である。
所得0円の俺が何を言っても後の祭りであるが
100万円なんて「さあ、どうする！」と言われても困る。
その中から選べる選択肢としては「どうもしない」くらいのものである。
そんな怪しい何かとは関わらないにかぎるのだ。
以前のマンションに住んでいたころ、エレベーターの前に何か封筒が落ちていたのを見たことがある。
入っているのはお金だった。
万札が、いくつか入っていた。
「人生…初ドッキリ！？」
一瞬だけそう思った。
人間観察モニタリング！
悪趣味なことはやめてほしいが
こんな場末のマンションで人間観察モニタリング！するわけがないので
恐らくこれは何かのミスで落とされた万札なのだろう。
監視カメラは入口のほうにあるが
エレベーターの前にはない。
というか、正確にはあるが落ちている場所は
エレベーターと入口の間にある掲示板のところなので映ってはいない。
どうする？俺は3秒間くらい考えた。
財布の中には5000円くらい入っている。
別にこんな万札が欲しいほど困窮しているわけではない。
だが、逆に言えば5000円しか入っていない。
現金を下ろしに行くのも多少の面倒であることは俺もわかっているのだ。
口座に入っている金額と、実際に持っている金額は比例しない。
俺は、その封筒を拾い上げて、掲示板に押しピンで突き刺した。
俺はボールペンで「〇万円、入っていました」と書いた。
汚い字だった。
それは親切心ではなく嫌味だった。
これを見た誰か、封筒からお金抜かないかなって。
俺は拾うのも嫌だ。
でも、うかつにもこんな大金を落としてしまった誰かが
何の苦労もなくホッとしてしまうのもなんだか癪だった。
こんな人間観察モニタリング！みたいなことをしないでほしいと、思うのである。
俺はそれを掲示板に張り付けた後、エレベーターに乗って部屋に戻った。
数日後、掲示板に張り付けた封筒はなくなっていた。
何だったんだろう。
俺は人間観察モニタリング！は見ていないので
真相はわからなかった。
けれど、ああいったお金で人間を試すことはやめてほしい。
欲。
所有欲も、破壊欲も、金欲も、性欲も、人を惑わす。
目の前になければ気にならない何かが
目の前にあるだけで自分が自分じゃあなくなるみたいで気味が悪かった。
100万円はいりません。
なので4億円ください。
