空にふたをしたような雲が遠くに流れていくのが見えた。
新幹線の窓から眺める景色は時折田舎で時折、ド田舎である。
あぜ道を一直線に照らしている電柱を見ていると
いったん降りてそこを探検したいという気分になるのだが
それを事項することのできないまま
もう何度も、何度も大阪と東京の間を俺は往復していた。
今日は終わり、間もなく明日になるのであるが
今日の俺はご苦労だった。
何と言ってもここ2日間、ずっと、ずっと今日のために練習していたのだから。
面接なんてものは何を聞かれるのか分からないため、その用意はできる限り周到にしないといけない。
しかしながらどれくらい用意しても、緊張ですべて吹き飛んでしまうこともあるのだ。
やだやだ。あ~。
そして、今日はweb面接だった。
初めての、人生初めてのweb面接だった。
大学時代の新卒就職活動の際は
世界はまだ新型コロナウイルス自粛の環境下にはなかったためか
さまざまなIT企業の選考を受けていたのにも関わらず
web面接というものは一つもなかった。
そうして受けた人生初めてのweb面接は
なかなか…分からない。
web面接はwebカメラを見るため
その視線の先は相手ではないのだ。
目を合わせたいのならば相手の目とは違うところを見ることになる。
お互いが、お互いのために、相手を見ない。
俺は目を合わせて放そうとする努力を大学時代にしてきたというのに
逆に、ここにきて目をそらす努力をしようとは。
そうして今日の面接は
紋切り型の文句を言われなかったため、俺は心配になった。
新幹線に揺られながら、遠くの、山の向こうに追いやられていく雲を見て
向こうの空が焼けていくのを感じた。
おいらはどうも、まだまだ空っぽな人間のようだ。
そんな自分をたくさんの人とたくさんの何かをして埋めていきたいと思う。
俺も子供が生まれたら
「あ~かわいいかわいい!やっぱり我が子はかわいいな~」
などとはにかみながら言うのだろうか。
しかしながら母体に負担をかけるだけかけておいて
父親面する男という生き物は、なんとも使い物にならないものだと
改めて思った。