白みかん

白みかんは、おいしいみかん。みかんを剥くのがうまいよ。

「あなたがいなかったら私の人生の楽しさもきっと減ってしまうので」

 




しばらく前に27歳になった。

27歳と言えばなんとも、なんとも重い年齢である。
結婚適齢期でもあるし社会人になってからは5年である。
そろそろ社会人としてのアイデンティティを確立し
自信をもって歩み始めて、安定し始めているころだ。

それがとうして、こんなことになっているのだろうか
…と思うくらいに俺は人間関係も、スキルも、枯渇した27歳だった。

新型コロナウイルスが蔓延して以降
かりそめの人間関係で満足していた俺は
今以上に、何とも言えないくらいに
人生におけるリソースがすり減っていっていた。
そうして迎えた27歳の誕生日だった。

いつものように起きた朝。
いつものように迎えた、1週間の半ばであった。

さようなら26歳。

それでも今年、何日かの人間から祝われたのは幸福なことである。
それが特別な何かじゃなくてもいい、十分だった。
きょうび、手紙をもらう機会というのはなかなかない。
後輩のうちの一人はちょっと古風らしく
彼女は手紙を書いてくれていた。
緊迫で光る大木のようなものがデザインされた
ちょっといい感じの厚紙の裏にそれは書かれていた。

「あなたがいなかったら私の人生の楽しさもきっと減ってしまうので」

読むのに40秒ほどかかるボリュームの中
そんな文章を目にした。

誰かの人生のパーツとしての自分は
あんまり考えたことがなかった。
たぶん、最近人と深くかかわっていないから
他人の中の自分を意識させられることもあんまりなかったのだろう。

この後輩に対しても自分は
きっと、またこれから心を閉ざそうとしている。
結構、面倒くさい。
面倒くさいのは自分だ。
この子は悪くなかった。

大事な人ほど傷つけたくはないのだが
傷つけざるを得ない自己防衛体制をとってしまう。
それでも何も考えないよりはマシ、なのだろうか?

俺は疲れていた。
27歳という数字にも自分の愚かさにも疲れていた。
誰か助けてはくれないか。
かつてのように、自分よりも優先して自分を助けてくれる誰かはいないか。

そんな最底辺ニートみたいなことを
今でも夢に見ている。