白みかん

白みかんは、おいしいみかん。みかんを剥くのがうまいよ。

「兄弟なんやから」

 

 

2023年1月。
休職同然の状態となった俺は正月休みも
休みの延長のようなもので、正直暇していた。
別に誰かと正月だからって遊ぶわけでもないのだ。

正月に遊んで記憶というのもほとんどない。
正月にはみんな何をしているというのだろう。

そんなとき父から連絡を受け取る。
梅田、集合。
彼からの連絡はいつでも突然だ。
たぶん同居していないこの状態は正解だったのかもしれない。

梅田に行って電気店を見て回る。
新しい賃貸に引っ越してからこの電気店には何度も訪れた。
引っ越し費用累計50万円。
その中にはこの場所で散財した分も含まれている。
もはや俺の預金通帳は危機的な状況である。

父と合流した。
今日は祖父の家に行くという。
そして孫が集うのだそうだ。
それは俺にとって初めての親戚イベントだった!

白みかん一族。
家系図は見たことがある。
だが父は次男だ。
きっとあのへんな巻物も長男が譲り受けるのだろう。

白みかん一族の、自分の世代は4人存在する。

白みかん…自分
ドラゴン…父の息子
中学生…父の兄の娘
バイオレンス…父の兄の息子

自分こと白みかんはこの中で圧倒的に年老いていた。
次点は中学生だった。

白みかん…こいつらも…白みかんなのか…。

別にこの世代の人たちに恨みはない。
だが俺は白みかんとしてのアイデンティティを保てずにいた。

血。

血というものが家族にはある。
だが、俺の家族は…家族観は恐らくちゃんとしたものではない。
ずっと家族として見られたくないという思いを持っていたのかもしれない。
俺は家族への執着は薄かった。

父母の離婚も祖父の奇行も
祖父が亡くなってからの祖母の精神病も
母の暴力と暴言も父の新しい家庭も
すべて家庭が起きたからこそあった災いである。

しかしそれを俺に絶対的に非難する権利はない。
子供は親の意思によって生まれてきて
親の意思によって扶養される。
これは義務であり、運命であった。
そうしてそれは俺にとっての理不尽でもあった。

「子は親の所有物や!」。

母は言う。
扶養されているから。
と言われれば、逆らえない。

もしかしたらアルバイトで生計を立てられるという
自信を持った人間もいるだろうが
自身さえも幼少期に失っている俺には反抗精神さえも生まれなかった。

「兄弟なんやから」

父は言う。
その言い方はアイに満ちている。
だが、俺にとっては母の言葉も、父の言葉も同じだ。

新しい命に罪はない。
だが、兄弟扱いされるのには違和感しかなかった。
子は親の所有物、だからこそそんなパーツみたいな扱い方になるのだろう。

パーツAとBがそろうと兄弟となります。

ドラゴンは何も感じていないようだった。
彼の年齢の時代、すでに俺はもうすれはじめていた。
ドラゴンは立派に育っているらしい。

ああ…。
彼を見ていて湧き上がる感情は…
ない…。

家族を見て湧き上がる感情も…ない。

俺はきっと蓋をしてしまった気がする。
一番センシティブのはずの家族に対して俺は何も思わない。
ただただ、あこがれだけがある。
俺は、俺のための、俺とともにある家族が欲しい。

けれど同時にそのエゴイズムが
今の俺を作り出したことを自覚している。

なぜ子をなすのだろう、この世界に。
ちゃんと考えているのだろうか。
そこまで考えないといけないのだろうか。

幸せに堕ちていく。