頭の中をくるぐると回っているものがある。
それは1つの悩みであった。
自分の精神は学生時代で止まっている。
自分の魂は学生時代に囚われているといってもいいかもしれない。
その頃の自分が尾を引くように、その悩みは俺の脳内で一定のリソースを占めていた。
「誕生日のお返しは何がいいかな?」
それは単純な悩みだった。
悩みと言う必要がないくらいの悩みだった。
さかのぼること、今は懐かしき今年の夏にもらったギフトチケット。
「甘いものでも飲んでね」
金額は2000円。結構、高かった。
金額、間違えてね?
学生時代の思い出はさすがに蘇らなかったけれど
俺はなぜだか消耗していた。
彼女への思い出はもう何週も何週も俺の頭の中でリフレインされて
すでに摩耗しつくされ、かなり小さくなっていた。
それでも俺の中の思い出の自分が頭をもたげ、その唇が強張る。
「そのお返しに何をするべきですか。」
俺は各所で聞いて回った。
とりとめもない言葉をもらい、とりとめもない言葉を返す。
「何を…。」
彼女はなぜ俺に微妙な距離感で関わり続けるのだろうか。
もうとっくに疎遠になってもおかしくなく
連絡自体は疎遠だというのに。
分からない。どうしてそんなことをするのだ。
もうとうに何もかも、終わっているというのに。
俺はそのチケットをいまだに使えていない。